お江戸お食事処

平岩弓枝

御宿かわせみシリーズ
    紹介
    かわせみマクラノソウシ
    シリーズ一覧、御宿かわせみ覚え書き 2005年5月26日更新
    私情、かわせみウラシマ

はやぶさ新八御用帳シリーズ まだまだ準備中

他の著作
略歴
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御宿かわせみ
 

紹介:

寺社の縁日、"武士のくせに、枝豆売りから買ったのを歩きながら手当たり次第に食べ散らかし、麦湯売りを見つけると、大声でるいを呼んでは、冷たいのを買わせて立ち飲みをしている。"〔2、江戸の子守唄 「お役者松」より〕

八丁堀の同心の一人娘二十五才のるいが、家を継がずに宿を始めた。
老番頭は元捕方、女中頭も昔からの使用人、
そこに来るのは幼なじみ、武家の次男、冷や飯食いの東吾、
男前だが性格は三枚目というモテ男。
捕り物方の知り合いが多いせいか、耳に挟む厄介ごとを放っておけない性質(たち)のせいか、
身の回りにはひっきりなしに騒ぎが起こる。
かわせみ周りにはいつもロマンスあり、お家騒動あり。ミステリ満載、オカルト少々。

季節の花と、旬の食べ物を楽しみたかったらここへ。
食べるものばかりではない海の幸、山の幸であふれている。
着物、小物、かんざしの細工など、和を楽しみたいときも一押し。 


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食べるもので、妙に惹かれるのは第七巻 「酸漿は殺し」の口笛に出てくる葛西から大川を下ってくる船。
"葛西の小松菜は日本一の美味といわれたし、寺島村の菜も悪くない、
隅田村の芋に綾瀬川の蜆、向島は鯉が名物だし、三囲下の白魚は珍味であった"

ここから来る一艘の野菜舟、春夏秋と、よもぎ餅、紫蘇餅、芋の餡の入った餅をこさえてくる。

"小魚の煮つけに、大根の柚子味噌かけ、豆腐の味噌汁、それに食べるそばからお吉が火鉢の金網で焼いては、大根おろしをまぶしてくれる薩摩あげ" 〔10、閻魔まいり 「蜘蛛の糸」より〕 も店の趣味からすると、「素材厳選」に違いない。

近くの蕎麦屋も居心地よく、根と蛸の炊き合わせ、鉄火味噌、板わさと、酒の肴を並べてくれる。〔31、江戸の精霊流し 「猫絵師勝太郎」より〕

"打ち菓子は秋の七草を各々、繊細に象ったもので、色も形も美しいが、口に含むと舌の上で柔らかに融け、程よい甘みとほのかな香りがなんともいえない。
練り物のほうは、「萩の露」と名付けられたもので、葛の中に、萩の花を思わせる小豆を鏤(ちりば)め(以下略)"
〔14、神かくし「時雨降る夜」より〕なんて文は見るからに目の毒。

"布看板に、亀戸名物、蜆汁、(中略)壁の貼り紙は梅飯、団子、葛餅。"
"素朴な椀にたっぷりの蜆汁は味噌の香と蜆の味がうまく混じり合って、空きっ腹にこの上もない。
 梅飯というのは、梅干と紫蘇漬けを刻んだのに鰹節と煎り胡麻をまぜ、それを熱い飯にまぶして。上から海苔を散らしたもの"

この素朴な材料が誰にでもできるかといえば、それを再現させようと女中頭が板前と大騒動。
"梅干はよく叩いてから切れの、紫蘇の刻み方が悪いだの"
見栄え二の次じゃ客商売はやっていられない。〔17、雨月 「梅の咲く日」〕

美食ドラマではなく、れっきとした捕り物帳なのだけれど、やっぱり読んでいて目がいくのは食べるもの。
そして主人公もいい年のくせに捜査の最中に注意を受けるのだ。
「東吾さん、買い食いは帰りにしてください」 〔15、恋文心中 「浅草天文台の怪」〕
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少々出来すぎの主人公たちを支えるのは同心、源三郎、妹的七重、美男の医者、以下続々。
脇役のほうが威勢がよく、いつの間にか主人を差しおいては御宿かわせみに上がりこんで、
腹を満たしていく輩が現れる。

「昼飯はまだなのですよ、なにか、こう、あっさりしたものでいいですから・・・・・・」
本職蕎麦屋に蕎麦を打ってもらい、酒とおしのぎに松茸の焼いたのとこぶりな穴子鮨がふるまわれ、
そこへ帰ってきた主人にむかって
「いい所へ。まず一杯どうですか。ここの酒は腑(はらわた)にしみるほど旨いですね」
どっちが主人かと言う顔で
(以下略)〔27、横浜慕情 「浦島の妙薬」〕

七草粥にいたっては、あいさつそっちのけでかわせみの味をほめる。
「ここの家の七草粥は実にいい味だと思ったら、上等の昆布と鰹節をたっぷり使った上に、鶏の骨を煮込んで取った汁をまぜているそうですね。素人ではそこまでは出来ませんよ」〔27、横浜慕情 「橋姫づくし」〕

しかしこのふたりは食べるも仕事も、遊びも子育ても、持ちつ持たれつのところがあって、
東吾が脂ののった鴨南蛮に誘われる時もある。
「饂飩に入れた残りは囲炉裏端で焼いて、熱燗で一杯やると腹の底まで温まるんですがね〔27、横浜慕情 「橋姫づくし」〕
しかし東吾は仕事でありつけそうにない。
実際宴には鴨や葱を適当にのせて汁をかけたうどん、大皿には焼いた鴨肉や銀杏、唐辛子。そこに大きな酒瓶もでて...。

この輩はいかにも旨そうにモノを食ってくれるのだ。

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おまけ: 御宿かわせみマクラノソウシ風。
....だったのですが、できた結果は原型をとどめず。 

春は七草。粟粥やとろろ蕎麦、大皿に盛りつけたる春菜。
板前の手早くおろしたる鯛の刺身を、わさび醤油にひたして飯の上に並べ、上からぱらぱらと胡麻ともみ海苔をふりかけたる。
餅の入りて湯気の立ちたる粥。生姜のすりおろしたる甘酒。
桜餅につかいたる葉、三十一樽、醤油樽に漬け込みたる。
甘酒にあんころ餅、焼き団子に安倍川餅もいとをかし。
歯ごたえありたるちまき、餡の風味ありたる。

夏は鰹、筍の木の芽和えに茄子田楽。
鰹のたたきに木の芽田楽、青菜の胡麻和え、蕪の一夜漬け、浅利の味噌汁。
味噌の鍋はさらなり。
焼き茄子、ひじきに油揚げ、卵にあわせたる山芋。
焼き魚に大根、蛸の煮付、菜のひたし、豆腐汁にての飯。
笹の上に乗せたる焼けた鮎。
芋だの大根だのの煮えたる、また、煮しめと菜飯に酒飲みたるもをかし。
枝豆には揚げだし豆腐、ナスのしぎ焼きなどいとつきづきし。
鯉のあらい、きぬかつぎの付きたるもよし。
水羊羹、葛菓子、葛切り。
井戸につるしたるスイカ、まくわうりなど。
病などの折の梅干の入りたる番茶、白身魚団子、鯛の生き血さへをかし。
青梅の煮詰たる、ひとごとにあらず。
鯖煮たるに当たりたる、わろし。

ウナギは白焼き、酒の肴に、中串などは飯などもをかし。
鰻重に肝の焼きたる、筍の木の芽和え、もずくの酢の物を添えたる。

秋は、松茸。
冷えたる麦湯に枝豆、時雨蛤。焼きたる茄子の、胡麻味噌をとくとかけたるに、
鰹節とおろし生姜の冷や奴、三つ四つ、二つなどとりいそぐさへ、あはれなり。
まいて、紅葉の大樹の元にて幕をめぐらせ、野点などのたてたるが、ひなびた菓子でもてなし、いとをかし。
鯛の刺身に蛤のお吸い物、鯛の切り身の焼いたのに大根のあら煮、小松菜の胡麻あえ、
しめじや山薯、栗、銀杏、松茸さらなれど、
名月をめでる客達の供をしてきた駕篭屋や船頭相手の屋台のうどん屋はまたいふべきにあらず。
鮎の子を持ちたる、いとをかし。

冬は、煎餅。甘いもの屋の団子、餅菓子、汁粉、あんころ餅、甘酒は、いふべきにもあらず。
つきたての餅に大根おろしに醤油、すりこんだ柚子をまぶして食べたる折、
鯛、はまぐり、あわびを歳暮にと思いつくもをかし。
土鍋は牡蠣。鯛に蛤、豆腐に春菊、長ねぎ。
魚の塩焼き、芋の煮っ転がしもいとつきづきし。


古典の先生、添削して..。
他に、「皿」がならんだり「膳」で出したり、「器」や「肴」で描写したり、
行間を食わせるかわせみです。


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私情: かわせみウラシマ
シリーズはどれも珠玉ですが、〔8、白萩屋敷の月〕の「美男の医者」、「幽霊亭の女」、表題作「白萩屋敷の月」のあたりから俄然面白くなってくるような気がします。
9、一両二分の女の「美人の女中」、10、閻魔まいりの「源三郎祝言」、13、鬼の面の「忠三郎転生」
15、恋文心中 「八朔の雪」などが超個人的好みなり。 詳細はこちら

TVシリーズから入った人には違うかもしれませんが、
時代劇でこれほど男性髪型浮世絵風が思い浮かばない話がない。
それに三十年連載されているのに、登場人物が早急に年をとらないのもいい。
子どもたちはさておき、大人たちはいつまでたっても五年生のじゃりんこチエみたい。
そういえばマンガの中で「どうしてチエちゃんはいつまでも5年生なのですか」という質問に
「答 それはマンガだからです」みたいなことが書かれていたっけ。
そして「チエちゃんはいつまでたっても5年生なのに、どうして花井先生の子だけがもう歩いたりするのですか」という質問には
「そんな恐いことを聞かないように」
文学チックなかわせみも、きっとこのノリで読めばいいんだろう、か?

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はやぶさ新八御用帳

はやぶさ新八御用帳も、お鯉がなんとも料理上手。
詳細はまた今度。
まだまだ作成中。

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他の著作: ごくごく一部の紹介です。
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時代物短編集
ちっちゃなかみさん(角川文庫)
設定はお江戸だけれど、
話は時代を超えて。
表題作、こういうの、わたしはとっても、弱い。

現代物 長編
あした元気に
(文春文庫)
パパっ子ちいちゃん、入社式にもパパは付いてきた。
寄ってくる虫たちからちいちゃんを守ろうとする頑固なパパ。
パパと言うよりおでん屋のおやじ、そのおかみ、近所でも評判の中のいい親子だったが、
夫婦と娘、血のつながりはなかったのだ。

現代物 長編(連作)
花ホテル(新潮文庫)
フランスに住んで長い日本人女性が、南仏の山の中で古い建物を買い取ってホテルを始めた。
従業員として申し込んだのはフランス駐在生活の中で自分の家庭が崩れてしまった三木。
女主人の顔の広さで華々しいホテルオープンに先駆けて、バスルームに死体出現。
以下、ホテルを舞台に様々奇怪な事件が巻き起こる。

ふたりで探偵
(新潮文庫)
ツアーコンダクターの妻と家にこもりっぱなしの夫、ふたりがツアーで起こった事件を追及していく。

風子(新潮文庫)
現代っ子で手妻づかいの風子、芸者家業にあこがれて、芸者屋に入門願い出た。

女と味噌汁(集英社文庫)
けじめのある生活を送る芸者のてまり、夢は得意の料理を振舞える、味噌汁の出る屋台を出すこと。
そのためにはまず車の免許などを。
長い道のり、芸者家業、いかした女、人生いろいろあるもので。

現代物 短編集
藍の季節(文春文庫)
会社勤めの傍ら組紐をやっている藍子と、妹の澄子二人っきりの生活。
姉妹の葛藤、それぞれの恋愛、そこにお嬢様の友人も交え、
華やかそうで、悩みの多い恋愛談から、堅実な夫の浮気話、嫁姑問題(ラストが爽快)、珠玉の作品が詰まっています。

やきもの師(集英社文庫)
これ、女性が書いたの? 様々な芸に長けている作者の味がしみじみと出ている作品。

日本のおんな 天の花 地の星(新潮文庫)
京都から沖縄に嫁ぐその日、島に着くと新郎は瀕死の事故にあっていた話、
仕事一筋で過ごしてきた女性が、リゾート地の「地元の女の子」に教えられる話、
その他数作

わたしは椿姫 (講談社文庫)
パリ在長いその日本人女性は、知る人ぞ知る「椿姫」だった。 

「他人の花は赤い(文春文庫)
ミステリあり、現代問題あり、「虐げられた女、バカにするんじゃないわよ」ってな話も入っていて私は好きです。

他、作多数。
以前ふるほん文庫やさんに「平岩弓枝さんの小説をミカン箱一箱分」と注文し、どっと届いた中に入っていた中のほんの一部です。
また注文してみようかなぁ

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平岩弓枝略歴 
1932年 当時の代々木八幡神宮宮司の長女として生まれる。
1950年 日本女子大学文学部国文学科入学。
     "勉強はそっちのけで、日本舞踊、長唄、清元、鼓、謡、仕舞、狂言、習字、短歌など数え切れないほどの稽古事をする。しかし、いずれもちょっと齧った程度で大成せず"(「わたしは椿姫」巻末より引用)
1955年 作家、戸川幸夫氏に師事。
1957年 二十五才にて処女作を「大衆文芸」に発表
1958年 戸川幸夫の推薦にて長谷川伸の門下に。
      同門下に池波正太郎、山岡荘八、村上元三他の作家もいた。
      以後、多数の作品を発表しはじめる。
1959年 二月、「鏨師」を「大衆文芸」に発表。第四十一回直木賞受賞。
      十一月、初めて書いた狂言「雪まろげ」を大阪中央放送局で放送、大阪芸術祭賞受賞。
1960年以降、作品のラジオ、TVドラマ化多し。芝居の脚本も手がけている。
1979年 第三十回NHK放送文化賞
1986年 第十二回菊田一夫演劇賞大賞
1989年 第九回日本文芸大賞
1990年 「花影の花」で第二十五回吉川栄治文学賞受賞。
1997年 紫綬褒章
1998年 第四十六回菊池寛賞受賞

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