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トーベ ヤンソン Tove JANSSON
(1914-2001)


小さなトロールと大きな洪水
ムーミン谷の彗星
楽しいムーミン一家
ムーミンパパの思い出
ムーミン谷の夏まつり
ムーミン谷の冬
ムーミン谷の仲間たち
ムーミンパパ海へいく
ムーミン谷の十一月

聴く女
少女ソフィアの夏
太陽の街
人形の家
誠実な詐欺師
石の原野
軽い手荷物の旅
フェアプレイ
クララからの手紙
Meddelande. Noveller i urval
彫刻家の娘
島暮らしの記録

誠実な詐欺師 (1982年) 英題 The True Deceiver


 


あらすじ


親の代から住む森は、周りを侵食して徐々にその地を広る。
森を盾に住むは女流画家。外界にはめったに姿を現さず、近くの村とのやりとりで、かろうじて外界に通じている。

村に住む25才の女性カトリィは、金銭的な計算づくで女流作家に接近する。
雪の深いところで一人暮らしは大変と、ついには弟と犬を連れて同居に成功した。

画家はビジネスに疎い。カトリィは雑用係から秘書、ビジネスパートナーへと自主的に権限を広げ、
着実に夢を叶えようとする。
しかし女流作家も負けてはいない。
自分の作品と生き方に誇りを持っているのだ。
ふたりはぶつかり合いつつ、切り捨てられない。
ふたりの遠慮と葛藤を尻目に、カトリィの犬が、一足早く自我を解放していった。
飼いならされ、従順であるだけの存在から自らを解き放ったのだ。
犬の遠吠えがひびく。


感想

もっと読みたいのに、あ、終わっちゃった、と思った本。

それよりなにより 犬が、犬が。
氷の上の過去を象徴するオブジェも、芸術的すぎ。

英語版の表紙に書かれたルースレンデルの書評、
「登場人物が今も私にまとわりつく」 に嘘なし。
ムーミン九冊を 生んで築いた基盤に経験を足せば鉄岩板だ。

あつかましい居候なんて、さっさと追い出せ、と思う一方、
お互いを尊重することって、すごいエネルギーがいるんだ、
そこから生まれた経験値は、向上につながるんだとつくづく感じさせられた。
ふたりとも、心の動きにとっても敏感。

アクションではない、じわじわと相手との距離を測りあう緊迫感は、チェスを思い出す。
ネットの書評をみていると、この本が退屈で投げ出した、という人も何人かいた
チェスや将棋はやってわかるものであって、確かに見ているだけでは面白くなかろう。

他の人と暮らしはじめるって言うことは、お互いの領域を測りあうこと。
うっとおしいと思いつつも、相手の存在を尊重すること。
いい子ではい続けられない自分を目の当たりにすること。
攻撃をくわえて排除するのではなく、精神戦を通してお互いを高めていくこと。
そういえるのも、作者58歳、着実に成果を上げてきて、の賜物だろうか。
第一章は単なる状況描写ではない。大事なことがすべて詰まっている。
伏線ではない。
未来は今までの積み重ねなのだ、

これから結婚/同棲/共同生活に入る人に読ませたい。
英語バージョンのほうは、文章がとても平たん。高校リーダーの副読本にいいかも。
ただ、どの登場人物についても、
「こういう行動を取ったのはどういう理由ですか」
と聞かれたら、十人十色、四百文字でも収まらない答えになろう。
そして、解答は、ない。
作者はそういうときに限って、言動のみを描写しているんだ。
万事に「正解」があるならば、この世はどんなに平たんで退屈なものか。

前書きを書いているのはアリ スミス。
このひとも、一筋縄ではいかないものを書き記す人。

なにはともあれ、ムーミン(講談社文庫)をきちんと読みたくなる。




2013/05/07




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小さなトロールと大きな洪水 (1945)

ムーミントロールは冬の寒さに弱いのです。
途中であったひとりぼっちのスニフと一緒に、パパを探してママと歩き回る話。
寒くなる前にパパも家も、無事に見つかればいいのに。
そうこうするうちに周囲は洪水に見舞われた。

一番最初に書かれたムーミンとママ、そしてその周りのものたちの物語。

戦時中、風刺画を描くのも咎められ、明るい色を使う気にもなれず、気を明るく持とうと書きはじめた物語。
仕上がったのは終戦後、友だちの助言に支えられてだったと作者が序文に記している。
まだ完全に世界をなしていなかったムーミン谷の原型。
ムーミンたちは妖怪に似ている。
彼らはただただ、そこにいる。

ムーミン谷の彗星 (1946

地球に彗星が大接近。
地球の危機。
これを逃す機会はない。
ムーミンとスニフは彗星観測に出かけていった。

感想: 
アニメで見ていたときはわからなかったけれど、
こんなに多彩なキャラを、ひとりできっちり書くというのは、
本当にすごいことなのだと思います。






著作  (Wikipediaより抜粋)

小さなトロールと大きな洪水』 (1945年, Smatrollen och den stora oversvamningen)
ムーミン谷の彗星』 (1946年, Kometjakten)
『楽しいムーミン一家』 (1948年, Trollkarlens hatt)
『ムーミンパパの思い出』 (1950年, Muminpappas bravader)
『ムーミン谷の夏まつり』 (1954年, Farlig midsommar)
『ムーミン谷の冬』 (1957年, Trollvinter)
『ムーミン谷の仲間たち』 (1962年, Det osynliga barnet och andra berattelser)
『ムーミンパパ海へいく』 (1965年, Pappan och havet)
『ムーミン谷の十一月』 (1970年, Sent i November)

聴く女』 (1971年, Lyssnerskan)
『少女ソフィアの夏』 (1972年, Sommarboken)
『太陽の街』 (1974年, Solstaden)
『人形の家』 (1978年, Dockskapet och andra berattelser)
『誠実な詐欺師』 (1982年, Den arliga bedragaren)
『石の原野』 (1984年, Stenakern)
『軽い手荷物の旅』 (1987年, Resa med latt bagage)
『フェアプレイ』 (1989年, Rent spel)
『クララからの手紙』 (1991年, Brev fran Klara och andra berattelser)
Meddelande. Noveller i urval 1971-1997 (1998年、未邦訳)
自伝 [編集]『彫刻家の娘』 (1968年, Bildhuggares dotter)
『島暮らしの記録』 (1993年, Anteckningar fran en o)











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