本の棚

長野まゆみ 



読みたいなと思って脇に置いて、そのまま見つからなくなることがよくある。
自分でもわかっているから、できるだけ別にしまいこまないようにはしている。
けれどここ数日、長野まゆみの「天然理科少年」が見当たらない。

見つかったところで、特に再読したいわけではない。
おおまかなところは覚えている。
湖の挿話は怖美しくていつも開けない。
装丁の人形を今特別みたいわけでもない。
(パリでも展示会のあった、好きな人形作家ですが、これも瞼に焼きついている。おまけにネットで確認もできる)
ただ、「天然理科少年」を探しているだけ。
どこにいっちゃったんだろう。

異空間で羽休めをしていたりして。

長野さんの本って、異空間本棚にちんと並んでいてもおかしくない。

わたしにとっての危ない順 (この世と異世界の境界が危うい順であって、男色順ではありません)

箪笥のなか 2005/09
となりの姉妹 2007/03
あめふらし 2006/06
よろづ春夏冬中 2004/10
左近の桜 2008/07
天然理科少年 1996/12
猫道楽    2002/06

別格
八月六日上々天気 1995/04

美術系物
コドモノクニ 2003/04

ファンタジ?
カルトローレ 2008/01

美少年物 男色ディープ順 (濃い順)
紺極まる 2003/12
鳩の栖 1996/11
新学期 1995/07

高野まゆみさんの文章に惚れました。
男色、少年愛は個人の趣味としておいておいて、
好きな言葉を集めて、好きな世界を作る作家さん、と勝手に解釈しながら読んでいます。
言葉は選ぶもの、言葉ひとつで人となりがでる、と教えてくれる文章です。

箪笥のなか

海辺の親戚のうちからきた赤い箪笥。
あらかじめうちにあったかのように、ぴったりと収まり、引き出しから、その周辺から、不思議なオブジェが現れる。

梨木香歩の「家守綺譚」jの時代にときどきさかのぼる現代幻想記。
弟は空気をよまず、見えないものと出会い、ポイントを天然に外してけんかにもならない。
そんな生き方があってもいいじゃないか。
社会生活は礼儀正しく送っているのだし。

不思議な空気であふれていて、何度となく読み返す本。
この空気に酔うために。
                                       (ちょっと雑文、箪笥World 箪笥の抽斗へ)

となりの姉妹
普通の近所づきあい、ちょっと社会から外れてしまった兄、その家族。
と書けば普通のホームドラマ。
見方を変えればなんだか異世界に通じている空間。


あめふらし 
 異次元世界系。美少年気を失わせて従わせる系。
 だからといって読まないのはちょっと損かと思えるワールド爆発な話。
よろづ春夏冬中
 短編集。
 あめふらしのどんでん返し付き。

 ここに収録されている「空耳」、最後には君たちなんでもやんなさい、という展開にはなるが、サリー君のキャラは奇天烈だ。
 自由奔放なようで、本音は言えない、この辺はフツウ。けれどこの「自由奔放さ」が気持ちいい。空気は読まなくていいんだよ。好きなことをしよう。
 生臭さはいただけないけれど、基本的には好きです。

左近の桜
 隠れ茶屋物語。
 BL。
 美少年が抵抗の末に気を失い。
 女が書くから許される。
 この世のものでないものも絡めるから許容される。
 この人の筆致はなにを書いても許されそうな。
 でも私には刺激が強かった。

天然理科少年 1996/12
 装丁きれい。美大は違う。
 吉田美和子さんの人形が迫力。
 
 中身は綺麗につじつまがあいすぎて、隙がないような。
 この後長野さんのワールドはどんどん違うほうに向かっていって、起承転結はもういらない。語りでどこかへ連れて行って、くらいこちらを酔わせてくれるんだろうな。
 そういう風に書いたら、この話はどう進むんだろう。
 BLでもなく、安心して人に薦められる綺麗な本。


 以下駄: 私だったら森を抜けて、ムーミン谷に降りたいな。

猫道楽 

BL、アダルト、男同士のお話でした。
魔夜峰央っぽく、挿話も描写もはきれいなんだけど、わたしにとってはどうもディープで。
それでも、お盆の堤燈、菊の綿、回り灯籠、小物遣いにお屋敷の想定は豪華。一読の価値がありました。


別格
八月六日上々天気
 
原爆が近くにある人が書くと、こうなるのかも。
梨木香歩さんの書く100年前、
もしくは北村薫さんの昭和がこういう感じかな、とも思ってしまいました。

美術系
コドモノクニ 
世代が微妙にかぶっているからだろうか。
小学生の頃の作文を読んでいるみたい。
なになに君と遊んだ。なになにちゃんとなんとかごっこをした。

手先が器用な、美術系の片鱗があちらこちらに見られて、
美大って面白そうだなと、現実味もなく思ってしまった。
アートファミリーに生まれたのね、この方。
デビュー作のアリスも改造アリスもまだ読んでいないけれど、
ネットで立ち読みできる装丁はドキドキした。(河出書房新社の特設ページ)
描けて書けるっていうのはわたしにとっては神様だ。

物を書く仕事をしたいなぁと、思う本。
ファンタジ?
カルトローレ 2008/01
空に住んでいた一族が地に下りてきて、ひとりは僻地に移住した。
地上の生活ではじまる日々をつづっていく。

梨木香歩のピスタッチオをSFにしたような調子。 
上橋菜穂子の精霊シリーズも思い出す。
 


美少年物 男色ディープ順 (濃い順)
紺極まる 

鳩の栖の後の話二話とリンク。
予備校講師、ネットで探した物件に引っ越すと、予備校生がすでに住んでいた。

男と女で書くと普通のドラマ。
男同士であるがゆえに越えられない一線がある?
少女漫画の美少年物炸裂。
タッチがいいからラノベにはあらず。
書ける人っていうのはこういう人をいうのね。
こういうベクトルが自分に向きっぱなしな美少年たちを、大人にすると?

この人の話は普通に(?)男の好きなパパも出てくるが、
ちょっと外れると、となりの姉妹の「兄」みたいになっちゃうんだろうか。
この作者の本は変に妄想が広がります。



鳩の栖 
 少女まんがを思い出す男の子たち。
 病弱で線が細くて複雑な家庭。
 お耽美、優雅、幽玄な語りがすべてを許させる。
 これの反対バージョンが竹久夢路の女性像かもしれない。

 
新学期

親戚から離れて兄の下に同居する17才下の弟。
先生な兄、転校、病弱な友人、男子校、小さな町の古い路地。長野さんモチーフ満載。
色気はわずか。

この人ほど年表の作ってみたくなる作家はいない。
嗜好の変化にそそられる。
ただ、出版社の意向とか大人の事情とかあるだろうから、
同人のほうが炸裂したかなぁと想像するのが読者の醍醐味。

女子美卒で絵も描ける。描いたら危ないだろうけれど、文章だからほっとする。
女性が書く美少年だからいいんだよね。


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