ハーラン コーベン Harlan COBEN 著

マーロン・ボライター シリーズ ミッキー ボライター   シリーズ外
沈黙のメッセージ Shelter (2011) Play Dead (1990)
偽りの目撃者 Seconds Away  (2012) .Miracle Cure (1991)
カムバック・ヒーロー 唇を閉ざせ
ロンリー・ファイター Gone for good
スーパー・エージェント No Second Chance   
パーフェクト・ゲーム Just One Look      
ウイニング・ラン The Innocent       
Promise Me The Woods    
Long Lost Hold Tight (2008)
Live Wire (2011) .Caught (2010)
Stay Close (2012)
Six Years (2013)

書きはじめは、途中がどうなるか作者自身にもわからない。「ニュージャージーからカリフォルニアまで運転するようなものだ。80号線を通るかもしれない。マゼラン海峡を通るかもしれない。東京によるかもしれない。でも、結局カリフォルニアにつけるんだ」 (著者のHPwww.harlancoben.comの、よくある質問より)

この人の作品はマゼラン海峡を地でいくようなものばかりだ。空間移動はたいがいアメリカ国内でおさまっているのだが、話の展開の方は「めまぐるしい」の一言につきる。謎が謎をよび、規模はいつのまにかふくれあがり、ただの人探しがFBI沙汰になったり、権力者の癇にさわったり。ともかく寝食を忘れて読んでしまう。ユーモアあふれ、漫才も満載、琴線に触れるようなきめ細かい枝葉がそこここに織り込まれて、しんみりともさせられるのだが、それでもハードボイルド。暴力、恐喝、鉄拳、拳銃なんでもこい、解決策は力ずく、ということも多く、こう血なまぐさくては食欲もわかない。

そんな中で胃腸剤のような存在が主人公の母。ヘレン。ニュージャージーにこの人ありと恐れられた敏腕弁護士だったのだが、家では息子思いのよくある母親。30を過ぎた息子に向かって「7時までには帰ってきなさい。心配するでしょう」とお説教をたれる。年は60に手が届いているが見た目は40代、行動はといえば16才。

そして、実は家事が大っ嫌いでお湯ひとつわかさない。主人公が子どものころ大好きだったのは「父の作るスクランブルエッグ」。そして今でもテイクアウトの中華や外食が中心の生活。台所は雑誌を読む場所で、夫に「ごらん。あの金属の箱が何かわかるかい?オーブンだよ。オ・ー・ブ・ン」とまで言わるしまつ (このオーブンがまた、政治家の聖書のごとく新品同様)。それでも夫婦仲はいたってオシドリなのだから、このシリーズの人間関係はほんとうにおいしい。

ちなみに主人公はマイロン・ボライター、30才前半のスポーツエージェント。元プロのバスケット選手の饒舌コメディアン。情にもろい親孝行息子。

マイロンとお神酒徳利はウィン。NY一等地に事務所を構える財務アドバイザー。金髪碧眼、見目うるわしく、ぬけるような白い膚。裕福な由緒正しい素封家の出身。「銀のさじをくわえて生まれてきた」のが名家のご子息なら、ウィンは「銀のゴルフクラブを手に生まれてきた」人。なぜか、アシのつかない車を常時数台持っている。

マイロンを支えるのは、小柄でキュートな元女子プロレスラー、エスペランザ。しんらつな口をきき、ふらふらと情に流さていくマイロンの尻をたたいて追いたてる。

この他に、いつも極彩色の服を着て、極彩色の化粧をした元悪者レスラーの巨大漢、ビック・シンディー(♀)、トウサクしたゾラなどなど、このシリーズは個性派がてんこもり。 キャラが勝手に動いて作者をのっとっているというのもまんざら作り話ではないようだ。

マイロンボライターシリーズ

    

あらすじ

(この作者のあらすじは落語のあらすじを聞いて笑えというようなものではないかと)

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

沈黙のメッセージ (1997年 早川書房) アンソニー賞受賞作 Deal breaker (1995)

マイロンの顧客バスケット選手のクリスチャンには、女子大生の彼女がいた。しかし一年半前から行方不明になっている。ある日クリスチャンの元に雑誌が届く。ポルノ雑誌の片隅に彼女のセミヌードの写真が入っていた。じつは数日前彼女の父が無差別殺人にあっている。それは本当に通りすがりの犯行なのか? 彼女は今どこにいるのか。謎を追うマイロンに身の危険がふりかかる。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


偽りの目撃者(1998年 早川書房)   Drop Shot (1996)

新星のように現れたテニスプレーヤー、ドゥエーン。USオープン、マッチの真っ最中に銃声がとどろく。殺されたのはテニス界のの元神童。被害者は直前までマイロンに連絡をとろうとしていた。殺したのは満席の観客席の前でプレーをしていたドゥエーン? 事件を追うマイロンに議員がたちはだかる。 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

カムバック・ヒーロー(1998年早川書房) アメリカ探偵作家クラブ賞受賞
Fade away(1996)

30代にのっているマイロンに突然プロバスケットチームからのスカウト。シーズンオフも近いというのに破格の待遇。しかし条件があった。失踪したスタープレーヤを見つけだしてくれ。どうも相手はかなり危ないところとの金銭トラブルがあったらしい。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ロンリー・ファイター(1999年 早川書房)   Back spin (1997)

いつも大切なところでしくじる人。一流のゴルファーの妻が万年スランプの夫、ジャックを称する。23年前にここぞというところで勝利を逃して以来、ジャックはいつも不調だった。ところが今回のUSオープンは違う。波に乗っている。今度こそ再起間違いなし、といったところで16才の息子が誘拐される。偶然この時期にさらわれたのか? 誘拐は狂言ではなのか? 犯人はジャックに恨みをもつ人間? ウィンは知恵を貸してはくれない。ウィンの嫌う、ウィンの身内におこったことだから。マイロンはひとりで一族の裏に踏み込むはめになる。

スーパー・エージェント(2000年 早川書房)   One false move (1998)

女子バスケットプレーヤー、ブレンダのボディーガードを依頼されたマイロン。今は姿をくらましている実の父からブレンダを守ってほしいとのこと。ブレンダの父はマイロンの恩師ともいえる人。そしてその妻、ブレンダの母は20年前から行方不明になっていた。話は20年前、ブレンダの母の働いていたある名家の事件を掘り起こすはめになる。いまや知事選に立候補して、選挙運動に奔走するその名家の。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

パーフェクト・ゲーム(2001年 早川書房)   The final detail (1999)

マイロンの留守中に、エスペランザが殺人容疑で逮捕される。エスペランザは一切をマイロンに明かさない。被害者は一度はだれからも見放され、再起不能ともされたが、今やふたたび華をさかせようとしていた野球選手。マイロンの創業以来の顧客であった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ウィニング・ラン(2002年 早川書房)   Darkest fear (2000)

最愛の人が不治の病に侵されていると知ったら? そして助かる道が閉ざされようとしているとしたら? 
マイロンの昔の彼女が、息子が悪性の貧血にかかり、骨髄の移植をしなければ命にかかわると伝えてきた。そして骨髄提供の話が立ち消えになったのだと。息子の年は13才、マイロンと彼女が最後に関係したのが14年前。マイロンは動揺したまま秘密厳守のドナーバンクにもぐりこむ。ドナーは幼児のときふっつり公から姿を消した億万長者の息子なのか? ドナーを探すマイロンの行く手をFBIがさえぎった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

補足:続きは? 

「マイロンの話はまた書きたいがいつになるかはまったくわからない。7巻目を書き終わったとき頭が真っ白になってしまった。次にマイロンの話を書くかどうかはマイロンが決めることだ。マイロンの声がしなければまだ書くことはできない。マイロンと仲間たちは帰ってくると思うけれど、それはまったく違った形になることだろう。後戻りすることは難しいし、それはよくないことだろう。」

(www.harlancoben.com) コーベンHP、よくある質問(FQA)より

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

Promise Me (2006) 

人のことに鼻をつっこまなければ無難にやっていける。
そうやって犯罪に巻きこまれなくなって六年経った。
変らないようで変わっていく周り。
今つきあっている女性は友人の友人。
友人の娘は今や大人と子供の間の世代となっている。
あの時その子に会わなければ。
あの時そんな約束をかわさなければ。
あの時タイミングがもっとずれてさえいたら。
マイロンは、このまま無難に生きていけたのだろう。
でも、言いたかったのだ。
困ったときは電話をくれと。
酔った相手の車で帰るくらいだったら、何時だろうと迎えに行くから。
君の事情は詮索しないから。
親にも内緒にしてやるからと、
そう約束をかわさずにはいられなかったのだ。
それでも、
もしあの時。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ティーンの失踪。犯罪に巻き込まれたのか、自分から姿をくらましたのか。
姿をくらます前に娘は大金を引きおろしていた。
そして娘はマイロンに電話をして、友達のところに連れて行ってと頼んだ。事情は聞かないで。親には言わないって約束でしょう、と。
そしてそのあと足どりを消した。
最近動向のおかしかった娘。家出なんてよくあることなのだ。
ただ数ヶ月前、同じATMで大金をおろした女の子がいた。
その子もどうやら家出だった模様。
どうして同じ機械で?
ティーンの家出とも思われる出来事に、マイロンは今度は娘の母親から約束をさせられる。
「私の娘を見つけて。連れて帰ってきて」と。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ちょっと回想口調な、思わせぶりな様子がいい。
語り口調が切実で、緊張感があちらこちらに感じられる。
六年ぶりにマイロンが帰ってきた。
そして、その年月の中、誰もがいろんなことがあったみたいで、なつかしの登場人物たちが少し年を重ねて戻ってきた。

家出少女の行方調査のはずが、親の中にも子供のためには手段を選ばず、暴力で物事を解決しようとする人間あり、その暴力に悪趣味な手段を使う人間もあり、誰もが目的のためには手段を選ばず、どうにも後味がわるくなりそな展開になっていくのだけれど、最後に、あぁこういう親子関係が言いたかったのか、というヤマがひとつ、そしてもうひとつ、あぁ、結局こういうテーマを話したかったのかと思う展開がひとつ。
最後の最後にすくわれるような話でした。
勧善懲悪で性善説な話?

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

Long Lost (2009) 

7年前、親密な時を孤島で過ごした絶世の美女。
あれは愛とか恋とかではなく、お互いそれぞれの自分を癒すための関係だった。
お互い過去も語らず、傷も語らず、ただひたすらふれあいを求め。
そして、離れてしまえばそれっきり、彼女を見つけることはできなかった。

そんな彼女からある日突然電話がある。
パリに来て。
理由も経緯も語らずとつぜん。
マイロンはもう今新しい懇意の女性もいるのだし、行けっこないよと答えるのだけれど、
それでも彼女は繰り返す。
パリに来て。

気まぐれわがままロマンチック。
つまるところ振り回されるがためにパリに行ったマイロンは、さっそく空港で止められ、警察に呼び出され、そして、10年近く前に死んだはずの子どもの行方を追う破目に。

あっという間に読んだけれど、途中からマイロンの"女性運のなさ"がまた見えてくるような展開。
ラストは一難去ってまた一難。
まぁ面白かったけれど、マイロンには幸せになって欲しいです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ミッキー ボライターシリーズ

マイロン ボライターの甥っ子、高校一年生が主人公のシリーズ。
個性的な友人ふたりに恵まれて、高校生活を送りながら、自分の家の問題と立ち向かっていく。
そして社会の問題にも。

原書はアメリカ英語。文章は短く単語が簡単。
中学の教科書に出てこないような言葉は妙にいわくありげで、どきどきしながら辞書がひける。
アクションは多いけれど伯父バージョンのようなスプラッタはなし。
ヤングアダルト、英語のラノベ。

シェルター




中学から持ち上がったような高校に"転入"してきた新入生ミッキー。
友だち派閥がすでに固まった中で、同じ新参者の女の子、アシュレーとの付き合いがはじまった。
しかし彼女が不意に欠席した。もう来ないかもと知らされる。携帯がつながらない。ミッキーは友人の助けを得て学校に忍びこみ、彼女の住所をさがす。そして、彼女につながる人に会いに行く。
が、それがまた、一筋縄ではいかないのだ。
話はいつしか、あぶないナイトクラブへとつながっていった。

友人たち、麻薬中毒のリハビリを受けている母や、死んだはずの父を生きているという老婆の話もはいり、飽きる暇なし。
老婆の家にはなにやらいわくありげな墓石もあるし。
不気味な男を書かせたら、天下一品なコーベンの、息をつかせない展開が続く。

感想: アクションよりも、事件の展開よりも、ミッキーの母の件が一番印象に残る。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

Seconds Away 

シェルター(Shelter)を読んでから読むべき本。


電話の向こうで彼女が言った。
あっ大変。切るわね。
そして数時間に発砲事件を知らされた。
前回から引き続いている、父は生きているのか、という真実を知ろうとするミッキーを、地に引き戻す出来事。

誰が撃ったのか。味方は誰なのか。
今回の事件に、前回からの謎が絡まり、最後の最後まで話は二転三転する。
犯人解明が重要なのではない。事件を通じてだれもが、なにかの信念を抱いている。

悪者がいました。善玉が立ち向かいます。そして悪者は退治される、もしくは勝つ。
アメリカミステリなんてそんなものだと思っていた。
何が正しくて何が間違っている。
物事そんなにたやすく割り切れはしないのだ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

シリーズ外

どの話も二転三転、大転回。

唇を閉ざせ(2002年 早川書房)   Tell no one (2001)

ある日、覚えのないアドレスからメールが届く。自分と妻しか知らないはずの言葉と、自分と妻しか知らないはずの記号を使って。
8年前の闇の中、さらわれ、監禁され、惨殺されたはずの妻から。

Gone for Good (2002)

11年前、ウィルの元恋人は、無残にも殺された。容疑者はその後行方をくらませたウィルの兄。それから一家は「殺人者をだした家」と見られ、笑いが消えてしまった。生死の程もわからない兄。きっと何かのまちがいだ、無実に違いないと信じるウィル。その心の支えとなったのが、今の彼女シーラだった。しかし、シーラも無残な最期を遂げ、シーラの指紋が兄の潜伏していたらしい家から見つかった。

NYの家出人シェルターで働くウィンが、ストリートキッズと接しながら、シーラの語らなかった過去を追う。しかし、いつしか危険が足元にせまってくる。

最後の最後の大円団では、いきなり足をすくわれる。余韻にひたれる1冊。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

No Second Chance (2003)

若い医師が自宅で襲撃を受け生死の境をさまよった。
やっと意識を取り戻したときに知ったのは、妻の死と、生後六ヶ月の娘が家にいなかったことだった。
捜索が開始されたのは失踪から十二日あまり過ぎた後。
そして退院と同時に犯人から身代金要求の連絡が入る。
「警察には言うな、警察の影がちらつくと、次の機会はもうないぞ」
電話を受けた時、家には警察とFBIがいた。
愛のない結婚生活、裕福な妻の実家、さまざまな過去を抱える人々を交えて、医師は身代金の受け渡しに出向く。警察から狂言の疑いをかけられながら。

かわいい盛りの赤ん坊が話の中心にいる。他にも訳アリの元FBI腕利き女性調査官、拳銃マニアの実直な男、元有名子役俳優、出てくる人間がどれも一目おける設定となっている。
脇役の「友人である弁護士の妻」でさえ見過ごせない存在感を持つ。
はじめは人間関係の描写と過去の回想で、まだるっこしい感があったが、ひとたび役者がそろい、話が現在進行形で走り出すと、派手なアクション、捕り物劇、一難去らずにまた一難、この作者得意の見どころが絶え間なく用意されている。

途中、「こりゃ今警察に捕まったら事の成り行きをどう説明するのだろう」と思わせるほど事件も場所も二転三転、そして話は単なる誘拐劇にはとどまらない。
なんとも見せ場が多く、テンポの速い話でした。 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

The Woods

新鋭弁護士、未成年ストリッパーのレイプ事件を担当。加害者は金持ちのボンたち。
この勝負に勝ちはあるか。
この法律家、実は過去にサマーキャンプ殺人事件で姉を亡くしている。
サマーキャンプで殺害され、埋められた四人。その後他の地方で同じような事件が続発。
けれど、真相は一体なんだったのか、探りはじめたきっかけは、キャンプで死んだはずの男の一人が、あらたに姿を現したため。

事件が交差して、息をつかせない展開があるのだけれど、事件の真相は知れれど、主人公は幸せになれず、といったラストは、後味そんなによくないです。

この本でひとつ頭を離れない言葉がある。
 "That's bad?"
 "That's bad"
夫婦は他人になれるのだけれど、親子は他人になれないのだと、つくづく思い知らされてくれる、コーベンによく見られる親子関係の話でした。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

Just One Look (2004)

画家であり、二児の母親、そして年月を経た愛を重ねる妻であるグレース。
ある日の午後、学校へ子どもを迎えに行く途中、写真屋に立ち寄った。
現像したての封筒の中に、若かりし頃の夫と思われる男が友人三、四人と写っている写真が入っていた。
時を経て色の変わった、友達同士のスナップ写真。
グループの中に男がもうひとり、ひとりの女の子は親密な視線で夫を見つめている。そしてもう一人の女の子の顔の上には、黒でXが描かれていた。

仕事から帰ってきてそれを見た夫は突然ドライブに出かけ、そのまま行方をくらませてしまった。

夫はなにかのトラブルに巻き込まれたのではないか?
手を尽くして夫の行方を捜すグレースの前に、弁護士を名乗る男が現れた。

偽装殺人、コンサート会場での事故で受けたトラウマ、ネット上の出会いを糸口にした犯罪。
複数の出来事が同時に進行し、ほんの数日間で、皆の人生が大きく変わる。
そして最後の一ページで、
今まで愛していた夫との日々が色をかえ、自分の信じていたことが、すべて根底から覆される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

隣人あり、過去の栄光を抱えるレスラーあり、弁護士あり、ミュージシャンあり、殺しの名人あり、得体の知れない人間を多く出入りさせる旧家のあるじあり、悲しい未亡人あり。
一体誰を信じていいのか、誰が本当のことを言っているのか。一人一人の思惑はいったいどこにあるのだろうか。
登場人物がこれでもかというほど入り乱れているのもかかわらず、ひとりひとりが丁寧に書きわけられ、時の流れも追いやすく、途中で迷うことなく読める。

見せ場多し、登場人物を生身で感じ、人々の過去を追い、心の奥底を垣間見たよう。
ペーパーバックで買うより割高だと思いながら購入したけれど、それだけの価値は大あり。
この人たちは次に何をするのだろうと、気になってやめられない本。

登場人物の中にマイロンシリーズや今までのシリーズ外の作品からの使いまわしキャラが数人登場。
これがまた以前に増して個性を強く見せつけてくれる。
シリーズ外の「唇を閉ざせ」を今ひとつ気に入らなくて、売っ払ったことに今更ながら後悔ひとしお。
もう一回「唇を閉ざせ」買ってしまうかもしれない...。

最後のどんでん返しの見せの旨さには、今回も呆然とさせられた。
男の作家のくせに、女や家族、子どもやロマンスをこんなにうまく書けるなんて。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

The Innocent (2005)

些細なことから罪をおかし、九年刑務所に入っていた男、しかし今はきちんと職を持ち、妻は待望の子どもを体に宿し、幸せを絵に描いたような生活をしていた。
子供の成長をタイムリーに知ることができるだろうとビデオつきの携帯を購入。
ある日、出張中の妻から電話が入り、そこには見知らぬ男の姿が撮影されていた。
そしてその次の通話では、見知らぬ男とともにいるブロンドのかつらをかぶった妻の姿が。

ほかに殺されたストリッパーと生後すぐに引き離された娘、
修道女の不可解な手術、さまざまな話が、また最後にはつながっていく。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

マイロンもこの話もニュージャージィの話で、登場人物が微妙につながっている。
それがわからなくても読めるからいいのだし、それを引き合いに出さなくても話全体に登場人物がどんどん使いまわされている。
話つなげすぎな少女漫画の構成を思い出すけれど、それはそれでまた楽し。
ただ、話が進むにつれて人の命がとんどん軽く取り扱われているような気がしてきたのは気のせい?
それと、著者は子供が5人くらいいるようだけれど、こんなにストレス溜めた妊婦、ちゃんと出産できるなんて、
やっぱりこの小マダム、運がいいんだね。
いろいろ考えると後味、これはあんましよくなかったような。
でも、人間関係の描写だとか、短文でぶつぶつ切って盛りあげて場面転換させるサスペンス性だとか、始めのほうが特に読む価値ありだなぁと思いました。
後、「犯罪者の飛行機の乗り方」
Fの数、わたしも見事に引っかかってしまいました。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

HOME 本の棚